2011 年 02 月 11 日 (金)|RSS Feed
漢方に取り組むきっかけ

by 漢方屋

漢方に取り組むきっかけ

1) なぜ漢方に着目し、治療を行い、今回のような不妊治療においての論文を出されたのですか?
産婦人科の一般診療において、いまや漢方薬はなくてはならない存在です。たとえば、更年期障害などでは女性ホルモンの補充療法が根本治療ですが、補充しても様々な症状すべてに答えられるわけではありません。西洋医学では対応しきれないこれらの症状を、漢方薬が見事に改善してくれる症例を経験し、本格的に漢方薬を学び始めたのが、私と漢方薬との出会いでした。

漢方薬を知れば知るほど、その理論は奥深く効能が繊細かつ多彩であることにまず驚きました。と同時に、適切に使用した場合のその実際の効果にとても感動しました。ただその時点では、私自身も漢方薬と高度不妊治療とのコラボレーションについては想定しておりませんでした。越田クリニックで不妊治療に携わる機会があり、不妊症や不育症を本格的に学ぶにつれ、不妊治療こそ漢方薬の真価を遺憾なく発揮できる領域であるということを確信するようになりました。

東洋医学の中の妊娠の概念だけではなく、不妊治療における問題点を西洋医学的に考えることで、その理論を逆に東洋医学にあてはめて考えることが出来たのです。

今回の発表では、不妊治療における「加齢」の問題に挑んでいます。
不妊治療、特に高度生殖医療は、ここ30年で革新的に進歩しました。ところが、その最先端医療を用いても「加齢」の壁は非常に厚く、想像以上に早い段階から妊孕能は低下していることがわかってきました。海外における卵子提供の研究では、「若齢者から得た胚を高齢者に移植すると妊娠率は低下しない」ということも知られており、加齢に伴い妊孕能が低下する主因は「卵巣および卵の加齢」であろうと想定されます。

東洋医学では、「加齢」を予防する目的の漢方薬として「八味地黄丸」が非常に有名で、日常的によく使われています。ただ、日本では「高齢者の漢方薬」として紹介されているばかりに、「閉経後や定年後から飲む薬」という風になんとなくイメージされるかたが多いのではないでしょうか。


実際には、生殖機能を含めた身体の各機能はもう少し早くから衰えてきますので、個人差はあるでしょうが、30代から飲んで効く漢方薬だと思います。その主な構成生薬の1つが「山芋」と聞けば、いわゆる「精のつくもの」として古くから日本でも慣れ親しまれているものでもあり、その効能は容易に想像がつくでしょう。高度生殖医療の現場でも、患者様の「妊娠力」を必ずや底上げしてくれるものと期待しています。

2) 不妊治療における漢方治療の長所・短

長所は、「西洋医学の隙間を縫った、きめ細かい効能が期待できること」です。たとえば、「ストレスで胃腸の動きが悪いときの薬」や「脚は冷えるけれど顔や手はのぼせるときの薬」「緊張すると手足に汗をかく人のための薬」など、西洋薬ではありそうでない効能を発揮する薬がたくさんあります。不妊治療では、先にご紹介した「老化防止の薬」以外にも「子宮卵巣の血のめぐりを良くする薬」や「冷えを改善する薬」などが活躍します。

短所は、西洋薬と同様に「副作用が起こりうること」「西洋薬にくらべ必要量が多いこと」「様々な味があること」でしょうか。ただ、副作用に関しては、これは短所と言うよりも、あたりまえの事実です。身体に取り込む薬である以上「よく効くし、副作用も必ず起こりうる」ものなのです。副作用に関しては後ほど詳しくご説明します。