2011 年 08 月 31 日 (水)|RSS Feed
堕胎は避妊の延長上にある

by 漢方屋

堕胎は避妊の延長上にある

出産には性交が必要であるであるが、性交にとって出産は必須ではない。出産は子孫を後世に残していく作業の一環(すなわち生殖)であり、時間的にはそれに次いで育児が待ち受けている。人間の性行為には文化的にさまざまに意味づけをされて単なる生殖行為とは見なされない側面が多いことは周知の事実である堕胎、避妊は多くの社会において知られており、「生殖としての出産」が性行為との関連の中でどのような位置づけをされているかを知る里程標となる。

現在、避妊具のひとつとされているコンドームは19世紀にイギリスで製造が始まった。またより確実性の高い方法として子宮内避妊具(IUD)や経口避妊薬がある。しかし、避妊に対するさまざまな習俗は歴史的にも古くから存在しており、いろいろな民族によっても報告されている。オセアニアのティコピア島民やザンビアのベンバ族では性交を中断する方法が知られている。ナイジェリアのイボ族では長期の授乳によって(生理学的には排卵が再開されずに)次の妊娠が回避される。西アフリカのヨルバ族では禁欲が行なわれ、フォン族(ダホメ)では産後の一定期間にわたる性交は禁忌である。妊娠を回避し出生をコントロールするという点で堕胎は避妊の延長上にある。

西アフリカ・ガボン共和国のファン族や東アフリカのチャガ族では出生を抑制するために堕胎がなされていた。一般的に嬰児殺や堕胎しといった現象は、生存環境がきびしく食料が不足しがちな共同体や、未亡人や未婚の娘が妊娠し出産することに対してきびしい制裁を与える社会でよく見られるという。前者の例として、極北の諸民族やサン族では嬰児を生き埋めにしたり、移動の際に置き去りにする習慣が存在したし、日本における間引きも同様のものと理解されている。後者の例としては、江戸時代における都市では中条流や、中世初期のヨーロッパにおける堕胎薬草の乱用などに代表される堕胎専門医があった。