2016 年 11 月 22 日 (火)|RSS Feed
日本人女性に8割もいる“デンスブレスト”って何?

by 漢方屋

マンモグラフィで見つけられない乳がんがある

タレントの北斗晶さんや小林麻央さんの乳がん報道以来、各メディアで乳がんが取り上げられることが増えました。普段から乳がん検診を受けていたのに、進行がんが見つかった有名人やタレントさんの話を聞いて、「では、一体どうすればいいの?」「どこでどんな検査を受ければいいの?」という不安の声が私のもとに多く寄せられるようになりました。

私は女性医療ジャーナリストとして乳がんを取材して数十年、その過程で私自身が乳がんになったこともあり、特に乳がん検診はこれまでもっとも掘り下げて取材・研究をしてきた分野の一つです。近年、早期発見のための乳がん検診について医療の世界で徐々に注目を集めている問題があります。それは「マンモで見つからない乳がん」です。

マンモは現時点で有効な検診法だが…

最近では日本女性の12人に1人が乳がんに罹患しているといわれます。特に40、50代は、“乳がん適齢期”ともいえる年代。自覚症状がなくても、乳がん検診を定期的に受けてください。さらに最近では、30代の乳がんも少なからず増えています。しこりがある、乳頭からヘンな液体が出るなどの自覚症状があれば、すぐに乳腺科を受診し、検査しましょう。

乳がんの早期発見に欠かせないのが、マンモグラフィ検診。マンモグラフィとは乳房専用のレントゲン(X線)検査で、乳房を透明な板で挟んで撮影する検査です。マンモグラフィは、世界的にも信頼性が高い、乳がんの検診法です。

現在、エビデンス(科学的根拠)の高い乳がん検診は、「40歳以降、2年に1回のマンモグラフィ検査」とされています。しかし、日本乳癌学会は、40代のマンモ検診の推奨度のグレードをAからB*に1ランク格下げして、超音波検査を組み合わせるかどうかを検討している状況にあります。

それというのも、マンモでは乳がんが見つかりにくいタイプの乳房が日本女性に多いことがわかってきたからです。


マンモでがんが見つかりにくいデンスブレストとは?

マンモグラフィでがんが見つかりにくい乳房は、“デンスブレスト(高濃度乳房)”と呼ばれます。乳腺が密集しているため、マンモでは真っ白に映り、仮にしこりがあったとしても、同じく真っ白く映る乳腺に隠れて見えない場合があるのです。

脂肪が多く、乳腺密度が低い「脂肪性乳房」であれば、マンモでは乳房は黒く映ります。ですから、白く映るしこりがあれば、見つけやすいのです。

ところがデンスブレストでは、乳腺もがんも白く映るため、がんを見つけにくい……。この状態を「雪原で白いウサギを探すようなもの」とマンモの画像を読影する医師たちは言います。

ちょっと難しい話になりますが、マンモ画像を医師が見る時、乳腺濃度によって下の写真のように「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「高濃度」の4段階に分けて診断します。

 左から、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度の乳房


左から、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度の乳房

写真提供/NPO法人乳がん画像診断ネットワーク 

前者2つ乳房(脂肪が多い乳房)は、マンモ検診に向いた乳房ですが、後者の2つはデンスブレストで、乳腺濃度が高くがんがあっても見つけられなかったり、見えなかったりする可能性が高くなります。要は「がんが見つからなかった」のではなく、単に「判別不能」の状態にすぎないのです。

ところが、今の日本の医療体制では、この4分類は私たち検診受診者には知らされない場合がほとんどで、単に「異常なし」か「要精密検査」とだけ伝えられます。このため早期の乳がんが見落とされ、進行してからみつかる可能性があると、指摘されるようになってきました。

日本女性の7~8割がデンスブレスト

アメリカでは、デンスブレストの女性が約4割とされていますが、マンモ検診受診者がデンスブレストの場合、医師は受診者に告知する義務があり、それを怠ると罰金刑に処すとの法律が24州で整備されています(2015年10月現在)。

アメリカでこのような法整備がされるに至ったのは、毎年マンモグラフィ検診を受けていたにもかかわらず、進行した乳がんが発見されたナンシーさんという女性たちの活動によります。

実は、デンスブレストの女性は、欧米よりアジア人に多いといわれ、日本女性の7~8割はデンスブレストともいわれています。

デンスブレストは比較的若い人に多いですが、人によっては70代でもデンスブレストの場合があり、年齢だけでは判断できないのが実情です。また、デンスブレストは、乳房の大きさや出産経験の有無などは判断材料にならず、マンモで撮影してみて初めてわかることです。

20人に1人はマンモで見落とされている?

乳がん画像診断を専門に行う第一人者、戸崎光宏医師は「乳がんと診断された患者さんのうち、マンモで見落とされたと思われる人が20人に1人はいる印象」と話します。

少なくとも、私たち女性に今できることは、まず、自分がデンスブレストかどうかの情報を得ること。自治体などで行われる検診で、マンモの結果しか書かれていない場合は、医療機関に問い合わせてください。「もし、デンスブレストなら、従来のマンモに超音波を加える検診を受けた方がいい」と専門家も言います。

デンスブレストの女性の場合、マンモに超音波検査を加えてチェックすることで、がんを見つけやすくなることが、日本人約7万人を対象に行われた最新の大規模研究*でわかっています。

マンモに超音波検査を加えることで、見つけられた早期乳がんは0.5%。マンモだけの場合の0.32%より約1.5倍、見つけやすくなるのです。

一方でマンモは、超音波では見つけることができない石灰化と呼ばれる超早期がんを見つけるのには有効です。マンモと超音波を組み合わせることで、それぞれの不得意分野を補い合え、より検診の精度を高められます。

「異常なし」でも、デンスブレストの確認をする

乳腺科クリニックで検診を受けて結果を聞く時は、マンモ画像を見せてもらいながら、デンスブレストかどうかを確認するようにしましょう。自治体のマンモバス検診のように、結果がレターで届くような場合は、検診先に問い合わせ、自身の乳腺濃度が4段階(高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性)でどのクラスかを確かめることが大切です。高濃度、あるいは不均一高濃度ならデンスブレストに分類されます。

繰り返しになりますが、デンスブレストなら検査結果が「異常なし」でも、実際にはがんがあるかどうかがわからない「判別不能」であった可能性が高いからです。

【1】マンモで見やすい乳房(脂肪性乳房、乳腺散在乳房)の方
現在、推奨されているように、40歳以降マンモグラフィを2年に1回受けることをおすすめします。ただし、自覚症状がある場合は、次の検診まで待たず、乳腺科を受診しましょう。

【2】マンモでは見えにくいデンスブレスト(高濃度乳房、不均一高濃度乳房)の方
従来のマンモグラフィ検診を2年に1回受け、その間の年に超音波検査を挟むのがいいでしょう。あるいは、マンモと超音波を2年に1回一緒に受ける方法もあります。デンスブレストであっても石灰化はマンモでしかみつけられないため、マンモは必ず受けてください。

【3】血縁者に乳がん、卵巣がんの人がいる方
血縁者に乳がん、卵巣がんの人がいる場合は、アンジェリーナ・ジョリーさんのような遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)のハイリスクの可能性があります。HBOCが疑われる人は、乳がん患者の約5~10%。心配な人は、がん拠点病院などで行われている遺伝カウンセリングで相談してください。必要ならMRI検査の併用をすすめられます。

マンモで見落とされた女性は声をあげよう

このデンスブレストの問題は、先に書いたようにアメリカではナンシーさんたちの活動により、世間の注目が集まり、法整備がなされるに至りました。ところが、日本では問題の存在自体がまだまだ知られていないという段階です。

マンモグラフィの盲点、デンスブレストについて日本でも声を上げていこうと、「NPO法人乳がん画像診断ネットワーク」では、マンモを定期的に受けていたにもかかわらず、進行した乳がんが見つかった女性の声を募集しています。みなさん一人ひとりが声を上げることで、この国の乳がん検診のあり方を変えていきませんか?