2017 年 01 月 04 日 (水)|RSS Feed
ヘビは本当に効くのか? 精力ムキムキ伝説を調査

by 漢方屋

明治17年創業の漢方問屋へ行く



 蛇は精力に良いと昔から言われている。本当に蛇は効くのか? ただのイメージ、ゲテモノ食べるオレすごい、じゃないのか? 調べてみた。

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 マムシでビンビン! 昔から、マムシやハブといった蛇はスタミナがつくと言われている。

 蛇料理を出す店は今も都内に数軒あるが、1950~60年代の蛇料理ブームでは、至るところで蛇を調理していた。

 伝説のプロレスラー、力道山も蛇料理屋を経営し、マムシ酒をベースにしたオリジナルの薬用酒を愛飲していたという。

 10年ほど前まで、東京には酒造メーカーの陶々酒(マムシ酒をベースとした薬用酒を販売)が経営する蛇料理専門のレストラン『マムレストラン・亜奈』もあり、店の常連客が中心になって『マム会』なる蛇料理愛好会も作られていた。

 蛇は本当に効くのか? 強壮薬としてのマムシは古くから知られ、平安時代の文献にすでにその名前が出ている。

 まったく効かなければ、現代まで残るわけもないだろうとは思う。

 しかしタンパク質が不足していた過去の日本ならいざ知らず、動物にそれほど有効な成分が含まれるものなのだろうか? 単に物珍しいの食べたという自己暗示で、気持ちがパワフルになるだけないのか?

 東京・蔵前にある『蛇善』は黒焼きの専門店。黒焼きというのは、炭を焼く要領で生物を炭化させたもの。

 黒焼きは生物の水分が抜けて有用成分が濃縮されるため、今でいうサプリメントのようなものとして使われてきた。

 あくまで民間療法で、医療の発達によってほとんどは姿を消した。わずかに残った黒焼き専門店の1つが蛇善なのだ。

 蛇善の店内には飲食スペースもあり、ちゃんと営業許可も取ってある。若旦那が捌いて、蛇料理を出している。蛇のイートインコーナーである。

 せっかくなので、魔女の叶ここさんを誘う。叶さんは祖父がスペイン人の魔術師という血筋で、本人も生業は占い師。

「蛇? かわいい! 飼いたいんですよ」

 いや食べに行くんだけど。

「蛇を? 食べますよ~」

 話が早くてよろしい。

 薬用としての蛇は、酒に漬けるか、黒焼き・蒸焼にするか、そのまま食べるかだ。

 漢方でいう蒸焼は中華料理などの蒸焼とは違い、カラカラになるまで乾燥させることをいう。釜で焼いて水分を飛ばす。黒焼は炭焼きと同じ要領で肉を炭に変えてしまう。

 蛇善の若旦那に話を聞く。

「生のモノを蒸し焼きにすると7分の1から8分の1に、黒焼きにするとさらにその5分の1ぐらいでしょうか。マムシ1匹80グラムが18グラムになる」

 マムシの内臓と皮を抜いたものが漢方薬の反鼻(はんぴ)で、こちらは天日干しだ。マムシドリンクによく使われている反鼻チンキや反鼻エキスはこれをアルコールに漬けて成分を抽出したもの。

「反鼻は尿管結石など結石に効くと買って行かれる方が多いです」

 黒焼きと蒸焼では効果が違うのか?

「黒焼きは化学的には炭です。炭素です。マムシでも何でも炭です。しかし竹炭と備長炭が違うように、元が何かによって違います。うちで一番売れているのはカタツムリの黒焼きでモグラの黒焼きもよく売れます」

 モグラ? 本当だ、モグラが置いてある。

 カタツムリは医学的に尿たんぱくを止める作用があり、腎臓に効く。モグラは体を温め、痔に効くと言われている。

皇帝の精力剤、雪蓮花



 黒焼きは要は炭だろう。炭を飲んだからって効くのか?

「昔からの言い伝えはいい加減で、マムシの黒焼きは強壮強精、でもシマヘビも強壮強精って書いてある。りんごも強壮強精」

りんごが効くなら、青森は子だくさんで大変なことになっているはずだが、そんなことはない。

「民間療法なので地域によって効能が違います。うちの町ではこういうものに効くと言われてきたと。いやいやそれが違うと説明しても、絶対に耳を貸さない。だからお客様が望まれるものをお出しする。

 するとまた買いにいらっしゃって、効いたよ、と。だから信じる者は救われるというのはだいぶあるんじゃないでしょうか」

 効く効かないは保証できないが、効くと思えば効くということだ。有効成分が含まれていないとまでは言い切れないが、基本的にはプラシーボなのだろう。

 蛇善では、黒焼き以外にも生きた蛇や漢方薬の原料も扱っている。

「中国に仕入れに行ったら、コブラ買わされたんですよ」

 さすが蛇善、仕入れるモノが違う。そういえばコブラもスタミナドリンクにはよく入っている。

 ちなみにマムシの毒だが、その正体はタンパク質。マムシ酒を飲んで、毒に当たらないものか? と不思議だが、タンパク質性の毒はアルコールで分解されてしまう。

「その時に、これは珍しいから売れるって……雪蓮花(せつれんか)って知ってます?」
 知らない。聞いたこともない。

「中国の皇帝なんかが飲んでいたそうです」

 チベット高原に咲く高原植物で、かつては皇帝や官僚クラスが独占していたらしい。

 効能は滋養強壮。成人男性が2週間続けて飲んだデータでは、射精回数や夜間勃起回数が有意に上昇、記憶力が向上、ストレスマーカーは低下した。

 雪蓮花は効くのだ。

 その成分はアルクチゲニンといい、ゴボウの種(解熱剤として漢方薬に使われる)などにも含まれる。アルクチゲニンの効用についてはゴボウの種での研究が進んでおり、抗がん作用が認められている。

 2013年3月から、国立がんセンター、富山大学和漢医薬学総合研究所、クラシエ製薬株式会社はゴボウの種からアルクチゲニンを抽出、『GBS-01』という抗がん剤として臨床試験を開始した。抗がん剤になるぐらい、強力に免疫系に働きかけるわけだ。

 雪蓮花は年数が経てば経つほど貴重になる。近年、日本にも入ってきているが3~5年物がほとんどだが、現地調達だけあって、蛇善が扱っているのは8年物だ。

 ホワイトリカーに漬けて1週間ほどで飲めるそうだ。漬けてあるものを試飲させてもらった。きっつい酒だが、後味は悪くない。続けて飲むと良さそうである。

 雪蓮花を買って帰り、家で漬けてみた。10日ほど漬けていたら、琥珀色に変わった。乾物のような匂いで、後味が苦い。苦い味の食べ物はそれだけで効くような気がする。

 3日ほど続けて飲むと寝起きが気持ちいい。友人に飲ませたら、やたら汗が出て体が軽くなったと喜んでいた。

取材・文 川口 友万